「少年時代に憧れたマシンでレースに出たい!」「FSF 2022」でデモ走行した「ノバ532」「シェブロンB42」秘話

2023.03.30

1978年の全日本F2選手権に参戦した2台のマシンが「富士スピードフェスティバル2022(FSF 2022)」でデモ走行を果たした。この2台にまつわる驚愕のストーリーをTipo 388号から要約し紹介させていただきたい。

ペンタックス・カラーの1台は、日本のノバ・エンジニアリングが開発し、星野一義さんのドライブで全日本チャンピオンを獲得した、ノバ532BMW。トミカ・カラーのもう1台は、イギリスのシェブロン・カーズが開発し、長谷見昌弘さんのドライブでランキング2位となった、シェブロンB42BMW。どちらもまるで新車のような、素晴らしいコンディションにレストアされているが、なぜ45年も前のF2マシンが、サーキット走行可能な状態でここにあるのか? そこには一人のエンスージアストの、当時のレースに対する熱い思いがあった。

原田 淳さん(56歳)は、日本初のレーシングカー博物館「レーシングパレス」の館長でいらっしゃる。現在は一般公開されていないが、日本のモータースポーツ史を彩った様々な貴重なマシンがコレクションされている博物館だ。2010年代に入ってから、原田さんはヨーロッパで行われている、国際ヒストリックF2シリーズという、1967~78年に生産されたF2マシンを使用したレースに興味を持たれた。メインで活躍しているのは、グラウンドエフェクトカーになる直前のマーチ782やシェブロンB40などで、自身が少年の頃憧れたF2マシンたちだったからだ。

レーシングパレスには、かつて日本のF2やFPで使用されたマシンが残されている。「それをレストアすればこのシリーズに参戦できる」という気持ちが起きると共に、「どうせなら自分が好きなマシンで挑戦したい」という思いが強くなっていったそうだ。こうして、レーシングパレスのシェブロンB42を、1978年当時の長谷見さんのF2仕様にレストアすることがまず決定する。それと同時に、ノバ532をレストアして、「星野さんが悔しい思いをしたヨーロッパF2への挑戦を、自分の手で実現して、当時のリベンジを果たしたい」とも考えるようになったそうである。

ただノバ532は、国内に2台しか現存せず、そのうちの1台は和歌山県のコレクターの方が走行可能な状態で所有されている。もう1台は徳島県の自動車修理工場にあって、屋内のショールームに長年展示されたままだった。原田さんはこの徳島にあったノバ532を、オーナーの方を5年かけて説得し、手に入れることに成功。2014年のことだった。

ここから2台のレストアが始まるのだが、ことはそう簡単ではなかった。なにしろ動かなくなって40年前後経っているレーシングカーなのだ。どちらも資料はほとんどなく、パーツも簡単には入手できない。そもそも費用が膨大にかかる上に、作業にはとてつもない時間がかかることになる。。。

困難を極めるレストアストーリー! 詳細はTipo 388号をチェックしていただきたい。